事例16:80代女性が後遺障害7級4号を獲得し、1767万で示談したケース
相談者・依頼者 事故類型 | 80代女性 県南地域 自転車を降りて横断待機中/開始直後に車にはねられた事故 |
傷病名 治療期間・実日数 | 脳挫傷・外傷性くも膜下出血、骨盤骨折 入院58日 通院349日間(実日数4回) |
相談・依頼時の状況 | 相手保険会社から後遺障害診断書・日常生活状況報告書の用紙が送られてきて2~3ヶ月経過した段階で、同居ご長男が来所。 後遺障害申請及び交渉等を受任。 |
後遺障害等級 | 健忘、高次脳機能低下につき7級4号 |
弁護士の活動・ポイント | ●等級獲得 ・「意識障害所見」の取得 ・詳細な「日常生活状況報告書」の作成 ●増額交渉 交渉で利益最大化かつ早期解決方針 →基本過失割合10%の代わりに、裁判基準に近い損害額を獲得 |
結果 | 1767万(後遺障害申請前受任のため呈示はなし) |
弁護士費用特約 | あり、自己負担0円 |
その他 |
1 相談・依頼のきっかけ
最終通院日から半年以上経過し、加害者側保険会社から後遺障害診断書・日常生活状況報告書の用紙が送られてきて2~3ヶ月経過した段階で、同居ご長男が、弁護士費用特約を利用して後遺障害申請及び示談交渉等を依頼されるために来所されました。
当時の相手方担当者は、交通事故証明書の被害者欄に「歩行者」と記載されているにもかかわらず、自転車乗車中の事故として過失相殺50%を主張するなど強行でしたが、ひとまずは適切な後遺障害等級を獲得することが先決でした。
2 弁護士の活動
直ちに加害者側保険会社から一件資料を取り付け、傷病名等から高次脳機能障害の可能性が高いものの、入り口(審査の土俵に乗るための)要件である意識障害レベル・継続時間が不明だったため、まず、事故直後担当医の「意識障害所見」を取得しました。
その結果、JCSというテストで14、転院時にも意識清明にはならなかったことが確認できました。外傷後健忘(PTA)の期間の長さについては「不明」とされましたが、詳細な「日常生活状況報告書」を作成し、コピーを添付したうえで後遺障害診断書の作成をお願いし、等級獲得自体はある程度の見通しが立ちました。
等級としては、入院中のMMSEスコアは軽度認知症の疑いに止まりましたので、神経系統の機能または精神に「著しい」障害を残す5級2号は困難な一方、中等度~軽度の障害により「軽易な労務以外…に服することができないもの、『一般人と同等の作業を行うことが出来ないもの』」には何とか該当する可能性がありました(「日常生活状況報告書」ではこの点を強調する具体的エピソードをできるだけ記載しました)ので、ひとまず事前認定を利用することにしました。
ここまで、来所から3ヶ月弱かかりましたが、約1ヶ月は、整形外科の医師が骨盤骨折について後遺障害診断書の作成自体を拒否したことが原因でした(最終的には、認定されても14級が限度で、併合による高次脳機能障害等級繰り上げの実益がないため、提出を断念しました)。
事前認定には、既往症がないか確認するため健康保険履歴・各病院への追加照会などもあって審査に付されるまで半年余りを要し、来所から1年余(事故から2年余)で漸く7級4号が認定されました。
賠償交渉については、難航が予想されましたが、事前認定手続き中に相手方担当者が交代し、事故態様・過失割合及び損害額について、思いの外スムーズに最終案まで進行しました。もちろん、80歳を超えるご高齢のため、主婦としての休業損害額・逸失利益額について他の項目と合わせて調整は要しましたが、合理的で穏当な範囲の調整に止めることが出来ました。また、入院治療について健康保険を使用していただいたため、治療費が20万円余りであったことも、大いに寄与したと思います。
一方で、依頼者様・ご長男としても、それなりに適正な金額であれば訴訟までは望まない(むしろ困難)とのご意向・状況でしたので、よい示談が出来たと思います。
3 当事務所が関与した結果
主な損害項目 | |
入院雑費 | 8万 |
休業損害(主婦) | 139万円 |
傷害慰謝料 | 147万円 |
逸失利益(主婦) | 768万円 |
7級慰謝料 | 900万円 |
過失相殺10% | -198万円 |
受取額 | 1767万円 |
4 弁護士の所感
本件は、重い後遺障害で相応に高額の賠償金となるため、他の解決方法として、異議申立及び訴訟提起により5級を主張する、本人尋問を経て判決を取得し遅延損害金年利5%も獲得する、過失相殺10%の判決が出ても人身傷害保険金で填補する、といった選択肢もあり得ると思います。
しかし、高齢の上に重い後遺障害を負ったご本人を裁判所で尋問にさらすことや、夜勤シフトもある仕事とお母様のお世話に加えて弁護士との打ち合わせや資料収集のご負担をご長男にお願いすること、事故後2年余り経過したところから更に1~2年かけてそのようなご負担を積極的にお願いする気持ちにはなれませんでしたので、裁判までは望まないという依頼者様たちのことばにホッとしたのが正直なところです。
個人的には、よい解決だったと思っています。