賠償額の3つの基準
交通事故の損害賠償額には、大きく分けると3つの基準があります。
① 自賠責基準
自賠責保険は、車の取得時・車検時に加入しなければならない強制保険です。国が「最低限」の補償を提供するもので、最も低い基準です。
ただし、非常に通院回数が少ない(期間が短い)場合の慰謝料額は、通常の「日額4200円×日数」の2倍で算出されるため、②より高く、③とも大差なくなることもあります。
② 任意保険基準
一般の自動車保険は、強制ではないので、任意保険と呼ばれます。
任意保険の対人賠償は、自賠責保険でカバーできない損害賠償義務に備えることを目的としており、自賠責基準を下回る呈示はできないことになっています。
しかし、下回らなければよいわけで、自賠責基準と大差ないことも多く、後遺障害部分については自賠責保険金限度額そのままの呈示も少なくありません。
③ 裁判基準(いわゆる「赤本」)
裁判になった時に裁判所が使う基準です。
毎年2月ころ、「赤い本」という書籍で出版されます。殆どの場合、自賠責基準、任意保険の基準よりも高額になります。
3つの基準の比較
① 自賠責基準 < ②任意保険基準 < ③裁判基準
弁護士がご依頼を頂いて保険会社と示談交渉をする時は、③裁判基準をベースに交渉しますので、保険会社の提示額よりも高くなることが多いのです。ただ、裁判基準の内容は複雑で、立証資料によっても大きく異なるうえ、毎年、新しい裁判例が出たり、赤本の基準や記載が改定されることもあります。
また、示談交渉段階では、保険会社によって赤本の7割まで、8割までしか応じない(それ以上は裁判を起こすしかない)という対応の違いも顕著です。そこで、治療を終了する際など、保険会社の賠償呈示の前でも、常に交通事故を扱っている弁護士に相談しておくことをお勧めします。