上肢(肩、腕、手首)の後遺障害

上肢の後遺障害の症状・種類

上肢は、肩関節・肘関節・手関節(手首)の3大関節で構成されています。交通事故(とくに自転車やバイク・原付)では、肩や腕・手首を骨折・脱臼した後に、肩が上がらない、腕が曲がらない、などの「機能」障害を残すことが少なくありません。

 

また、重大事故では、切断による「欠損」や、人工関節置換手術による「変形」障害が残ることもあります。

 

以下、3種類の後遺障害認定基準を、欠損障害、機能障害、変形障害の順に示します。

 

1 上肢の「欠損」障害認定基準

 

等級 認定基準
1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
4級4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号 1上肢を手関節以上で失ったもの

 

2 上肢の「機能」障害認定基準

 

等級 認定基準
1級4号 上肢の用を全廃したもの
5級6号 1上肢の用の全廃したもの
6級6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

●1級・5級「上肢の用を全廃」とは

3大関節のすべてが強直(きょうちょく)し、かつ、手指の全部の用廃

 

 

●6級・8級「関節の用を廃した」(用廃)

①「強直」=完全強直またはこれに近い状態(※)

※10°以下、または、健側(怪我がない方)の「10%程度」以下=健側×0.1を5°単位で切上げ

 

②「完全弛緩性麻痺」またはこれに近い状態(※)

※他動では(他人が力を加えれば)動くが、自動では健側の10%程度以下

 

③「人工関節等を挿入した関節の場合」は、可動域が健側の50%以下

 

 

●10級「関節の機能に著しい障害」

①健側可動域の50%以下

 

②「人工関節等を挿入した関節」で、用廃(50%以下)に至らないもの

 

 

●12級「関節の機能に障害」

健側可動域の75%以下

 

★関節の機能障害は原則として「主要運動」によって評価

ほとんどの関節では、日常動作に最も重要な主要運動は1つですが、肩関節と股関節は、2つの主要運動があります。
肩関節の機能障害の場合、屈曲および外転・内転の2つの主要運動が、どちらも基準以下であることを立証する必要があります。

 

なお、肩関節と手関節が「わずかに」基準を上回る場合(10級で10°、12級で5°)、参考運動が50%以下、75%以下なら、10級、12級が認定されます。(ちなみに、肘には参考運動がありません)

 

3 上肢の「変形」障害認定基準

 

等級 認定基準
7級9号 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
8級8号 1上肢に偽関節を残すもの
12級8号 長管骨に変形を残すもの

 

上肢の後遺障害の留意点

上肢に限ったことではありませんが、機能障害や運動障害の後遺障害診断書で、最も気をつけなければならないのは、可動域の測定です。
患側(「かんそく」怪我をした方)の測定値はもちろん重要ですが、それだけでなく、健側(「けんそく」怪我をしていない方) の測定値が正常値よりも大幅に小さい場合、健側の○%以下の制限という認定基準を満たさなくなったり、逆に、測定自体の信憑性が疑われるおそれもあります。

 

可能であれば、後遺障害診断の前に弁護士に相談されることをおすすめします。

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